奥の間

「ここに座ってお庭を眺めているとキミさんの気分ですね。」

 初代の本間泰蔵が晩年隠居部屋として使用しており、泰蔵の死後は長男泰輔の妻キミが住んでいました。 襖に描かれている漢詩は明治の三筆として名高い書家、巌谷一六(いわやいちろく)によるものです。 丸一本間家合名会社が創立し、本間家の建築整備が完了した明治35年の夏に招かれ、完成の祝典に合わせて 揮毫(きごう:毛筆で絵や字を書くこと)しました。

 漢詩は、向かって右から4枚が仲長統(ちゅう・ちょうとう)による「楽志論」、左側の2枚が作者不明で 、左壁面の4枚は『唐宋八家文』の蘇軾(そしょく)による「後赤壁賦(のちのせきへきのふ)」からの引用 です。

 「楽志論」において仲長統は「世俗的な名声はかわりやすく人生も短いので、士官などせずに気ままに 暮らしてその心を楽しませようと考えた」という論が展開されています。