概要

復元工事・一般公開までの経緯

丸一本間家(初代・本間泰蔵)は明治8年から増毛町弁天町1丁目において雑貨店を経営していましたが、明治13年大火に被災し、家財を失いました。しかし直ちにこれを復旧し、この地の将来の発展を見込んでさらに敷地を拡大し、呉服店舗、雑貨店舗、酒造蔵、居宅倉庫などを防災的な構造を視野に入れて着々と工事を進め、明治35年には丸一本間合名会社社屋中枢部を増築、初期建設のすべてを完了しました。その後昭和初期には社屋であった旧雑貨店舗を木造新社屋に改築、近年は老朽した文書蔵や木造属舎を撤去するなどの改変はありましたが、建物の外観や内装はほとんど明治35年のものが維持されていました。

昭和46年に北海道教育委員会が文化庁の民家緊急調査事業として全道的な民家緊急保存調査を行いましたが、この中の商業部門に丸一本間家が調査対象として挙げられ、翌年の報告書によって広く知られるようになりました。その後北海道大学工学部越野教授の詳細な論評などにより、この建物の価値、そして文化財としての保護が急務であるとの提言もあり、増毛町は平成9年にこの物件を増毛町文化財と指定、同時に「増毛町本間家保存修復事業」として推進することを確定、平成11年には復元保存工事が竣工されました。

この旧商家丸一本間家は明治の増毛町の経済的な発展を象徴してあることから、広く多くの人々に公開することとし、本間家所蔵の什器ほか備品等を展示し平成12年に開館しました。復元工事は初期の建築が完成した明治35年ころの再現を念頭に行われ、その延べ面積は590㎡近くもあります。

名称創建年代(推定を含む)現状・詳細
文庫蔵明治14~17年滅失/老朽化により解体・撤去済
呉服蔵明治23~27年現存/屋根瓦等復元・現在展示室
呉服店舗明治26年竣工現存/屋根瓦復元と構造改善の補強を加える
旧雑貨店舗明治27年竣工滅失/明治27年竣工の石造り雑貨店舗は昭和7年に木造社屋に改築、この部分は現存。屋根瓦等を復元、木造モルタルで一部を復元。現在は事務室
文書蔵明治27年竣工滅失/平成3年ころ老朽化により解体撤去
醸造蔵明治27年竣工
(前廊下は明治22年)
保存・一部滅失/昭和22年に土蔵北側半分を撤去。現存部分は屋根をステンレスに葺替、内外を修復
付属家明治27年竣工保存/もともと一階部分は酒揚場で、後に付属屋として2階3階を増築。1階は一部を機械室と来館者の手洗い場として外観を変えず改装した。北側の渡廊下や近年増築の浴室等は撤去
居宅明治27~35年保存/木造平屋、創建時は柾葺きだが保存工事でステンレスに葺替え、内外腐朽修復以外は改変はない
丸一本間合名会社社屋昭和7年頃滅失/もともとは旧雑貨店舗・回漕部や社屋だったものを昭和7年頃に解体して木造2階建に改築。老朽化も進んだため復元工事の際に解体撤去した
物置詳細不明滅失/老朽化により解体・撤去済